酒種酵母はなぜふわふわに焼けるのか。
麹の酵素の働きと、20年以上パンを作り続けてわかった
酒種ならではの強さについて、
天然酵母パン講師が解説します。

天然酵母ぱん蔵の 椿留美子です。
お山での田舎暮らしを実践、発酵生活をしています。
そんな暮らしを踏まえながら、東京と山梨で自家製酵母を使って、
発酵器を使わない、ほったらかしの「ゆるパン」教室を2009年より始めました。
現在は仕事で使いたい方、深く極めたい方向けのプロ向け講座をやっています。
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酒種酵母に20年向き合ってわかったこと——なぜこんなにふわふわに焼けるのか
昨日は甘酒のお話をしたので、今日はその仲間、酒種酵母について書いてみたいと思います。
酒種酵母は、なぜあんなにふわふわに焼けるのか。
20年以上、この酵母と向き合ってきた中でわかってきたことを、今日はまとめてみます。
酵母はまだいない——酒種のはじまり

酒種を作るときの材料は、麹と、炊いたご飯と、水です。
この時点では、麹菌はいますが、酵母はまだそこにいません。
そこに水を加えて、麹とご飯を混ぜていきます。
スターター、つまりすでにできている酵母液を使えば、早く発酵が進みます。
スターターを使わない場合は、空気中にいる野生の酵母を取り込むという考え方で作っています。
ふわふわに焼ける理由——麹の酵素、アミラーゼとプロテアーゼ
アミラーゼが生み出す甘みとガス

酒種がふわふわに焼ける理由には、麹の酵素の働きが大きく関わっています。
麹には、アミラーゼという酵素があります。
これが、お米のでんぷんを糖に分解してくれます。
その糖を、空気中から入ってきた酵母が食べて、ガスを出します。
これが、生地を膨らませる力になります。
プロテアーゼが生地の伸びを良くする

麹には、プロテアーゼという酵素もあります。
これが、生地の中のグルテンを少しだけ分解して、生地の伸びを良くしてくれます。
伸びがよくなることで、ガスを抱え込みやすくなって、ふわふわに仕上がります。
そして仕上がりは、皮が薄く、しっとりとした食感になります。
麹のほのかな香りも、酒種ならではの魅力です。
発酵が早くて安定している、酒種の生地の特徴
サクサク系には向かない、私なりの使い分け

酒種で作るパン生地は、他の酵母に比べて発酵がとても早いです。
そして、安定しています。
初心者の方でも、比較的楽に作れる酵母だと感じています。
ほったらかしにしていても大丈夫で、お世話もあまりいりません。
冷蔵庫に入れておけば、長い期間使えるというメリットもあります。
ただし、サクサクとした食感や、キレのいい仕上がりにしたいパンには、
私は酒種を使わない選択をしています。
20年以上前、食パンで気づいた酒種の強さ

私が初めて酒種を作ったのは、もう20年以上前のことです。
その時は、そこまですごいとは思っていませんでした。
他の酵母と、同じように考えていたんです。
でも、何回も試作を重ねる中で、一番よくわかったのが食パンでした。
低温でじっくりと発酵させて、ガスを溜めていくという、私の教室独自のやり方があります。
そのやり方で作ると、他の酵母との違いがものすごく出ました。
強い生地になって、長時間の発酵にも耐えてくれます。
伸びも、すごく大きくなります。
これには、私自身も驚きました。
甘酒と酒種——同じ麹から生まれる、違う顔
甘酒と酒種を対比して考えたことは、実はあまりありませんでした。
でも、同じ麹から生まれるのに、全く違う顔を見せてくれているなと感じます。
材料で言うと、日本のどぶろくを作る材料と、ほとんど同じです。
配合や扱い方の違いによって、それぞれ違う顔を見せてくれています。
酒種のほうが、香りもお酒に近い感じになります。
酵素はまだまだ奥が深い

私が主宰しているサロンのメンバーさん向けに、酵素についての勉強会をやることもあります。
短期プロ講座やプロ講座を卒業した方、現役生の方が集まる、発酵ラボというコミュニティです。
酵素というテーマは奥が深くて、1回では語り尽くせません。
今回は、3回に分けて勉強会を開くことにしました。
先週お話しした長野の農業高校での授業でも、
発酵スイーツ講座のメニューも、すべて酒種がベースになっています。
酒種の発酵スイーツについてはこちら
酒種酵母で焼くケーキが美味しい——常識を超える発酵スイーツの「食感」と「旨味」
酒種酵母「扱いやすくて、一番愛着が持てた」ー「絶対にできない」と思っていた場所から、いちばん愛着のあるものが生まれた話
来月から始まる短期プロ講座の9月生からは、新たに酒種酵母もカリキュラムに加える予定です。
こうしてパンの仕組みやメカニズムを、生徒さんたちと一緒に学び続けられることが、私にとってもうれしいことです。
酒種酵母に20年向き合ってわかったこと——なぜこんなにふわふわに焼けるのか まとめ

今日は、酒種酵母についてまとめました。
麹はいるけれど、酵母はまだいないという酒種のはじまり。
アミラーゼとプロテアーゼという、麹の酵素の働き。
発酵が早くて安定している、酒種の生地の性質。
そして、
20年以上前に食パンで気づいた、酒種ならではの強さ。
同じ麹から生まれる甘酒と酒種、それぞれの違う顔についても書きました。
酵素という世界は、まだまだ奥が深くて、私自身も学び続けています。
酵母のことを学んでみたい、という方はこちら
気になる方はぜひチェックしてみてください。
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