パン作りのベタベタ生地に困っていませんか?
実はその水分量こそが、プロのような
「しっとりもちもち」
の正体です。
今回は高加水パンが美味しい理由と、
魔法のように生地がまとまる「オートリーズ(放置)」の技術を、
天然酵母パン講師が解説します。

天然酵母ぱん蔵の 椿留美子です。
お山での田舎暮らしを実践、発酵生活をしています。
そんな暮らしを踏まえながら、東京と山梨で自家製酵母を使って、
発酵器を使わない、ほったらかしの「ゆるパン」教室を2009年より始めました。
現在は仕事で使いたい方、深く極めたい方向けのプロ向け講座をやっています。
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ベタベタ生地は「美味しさ」の証!高加水パンを失敗させない「触りすぎない技術」と待つ勇気
「パン生地が手にベタベタくっついて、ちっともまとまらない!」
「手は汚れるし、台の上はぐちゃぐちゃ。もう嫌だ、粉を足しちゃえ!」
パン作りを始めたばかりの方、あるいは少し慣れてきて
「高加水パン」
に挑戦しようとしている方にとって、この「ベタつく生地」は最大の天敵かもしれません。
私のパン教室「天然酵母ぱん蔵」では、自家製酵母を使ったパン作りだけでなく、
食を通して「暮らしそのもの」を見直すきっかけをお伝えしています。
今日は、多くの人が嫌う「ベタベタ生地」の正体と、
それを魔法のように扱いやすくする
「触りすぎない技術」
についてお話しします。
このお話を音声で聞きたい方はこちらからどうぞ。
なぜ「扱いにくいベタベタ生地」ほど、美味しいパンになるのか?
そもそも、なぜパン作りにおいて「水分量」がそれほど重要なのでしょうか。
最近流行している「高加水パン」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
これは、小麦粉に対して加える水の割合が非常に高いパンのことです。
一般的にはフランスパンやハード系のパンに多い特徴ですが、
実はこの「水の多さ」こそが、プロが焼くような
「しっとり感」
さらに天然酵母ならではの
「もっちり感」
の食感を生む鍵となります。
パンの「老化」を防ぐのは、たっぷりの水分

パンは、焼き上がったその瞬間から乾燥が始まります。
パンの世界では、水分が抜けてパサパサになっていくことを「老化」と呼びます。
以前、電子レンジでパンを温め直すとすぐに硬くなってしまうというお話をしましたが、
あれは電子レンジが急激に水分を飛ばしてしまうからです。
パン作りはその逆を目指します。
最初に生地の中に限界まで水分を含ませておくことで、
焼き上がった後も生地の中に水分が留まり、数日経ってもしっとりとした食感が持続するのです。
お肌と同じ?プルプル食感を生む「糊化(こか)」の秘密

皆さんは、お肌のケアで「保湿」がいかに大切かをご存知ですよね。
水分たっぷりの瑞々しいお肌は、時間が経ってもプルプルで弾力があります。
パンも、実はこれと全く同じなのです。
水分を多く含んだ生地は、オーブンの熱を通すことで「糊化(こか)」という状態になります。
これは、デンプンが水を吸って加熱され、お餅のような粘り気と弾力を持つ状態のこと。
この「糊化」がしっかりと行われることでもっちりとした食感が生まれるのです。
つまり、あの忌々しい(笑)「ベタベタ」は、
「美味しいパン」になろうとしている状態なのです。
ベタつく生地へのNG行動!「こねくり回す」と「粉を足す」は逆効果?
ベタつく生地を前にして、私たちがついやってしまいがちな
「2つのNG行動」
があります。
これをしてしまうと、せっかくの美味しいレシピが台無しになってしまうかもしれません。

1. 必死にこねくり回す
「まとまらないから、もっと力強くこねなきゃ!」
と、必死に生地と格闘していませんか?
実は、水分量の多い生地を力任せにこね回すと、
余計に手の温度が生地に伝わり、さらにベタつきがひどくなることがあります。
また、グルテン(生地の骨格)を無理やり引きちぎってしまうことにもなりかねません。
ベタベタ生地と格闘して、疲れ果ててパン作りが嫌いになってしまう……。
それはとっても悲しいことです。
2. 安易に「粉」を足してしまう

一番やってはいけないのが「打ち粉」の範囲を超えて、
ドバドバと小麦粉を足してしまうことです。
「まとまらないから粉を足して、扱いやすくしよう」という気持ちは痛いほどわかります。
しかし、信頼できるレシピで作っている場合、粉を足すということは、
計算された「水分バランス」を壊すことを意味します。
粉を足せば確かに扱いは楽になりますが、
焼き上がったパンは本来のしっとり感を失い、重くてパサついたパンになってしまいます。
せっかくの「高加水」のメリットを、自ら手放してしまっているのです。
最高の対処法は「放置」。魔法の技術「オートリーズ」とは
では、ベタつく生地をどう扱えばいいのか。その答えは、驚くほどシンプルです。
「ただ、放っておくこと」
専門用語でオートリーズと呼びますが、これがベタベタ生地を攻略する最大の魔法になります。
20分〜30分、ただ待つだけで生地は自らつながる
粉と水を混ぜ合わせ、まだ粉っぽさが残っていたり、
ベタベタしてまとまらなかったりする状態で、一旦作業をストップします。
そして、乾燥しないようにボウルを被せるなどして、20分から30分ほど放置してみてください。

すると、どうでしょう。
あんなにベタついていた生地が、時間が経ってから触ってみると、
不思議なことに勝手につながり、表面がつるんとしているのです。
グルテンは「育てる」もの。菌と水の力を信じる勇気
なぜ、放置するだけで生地がまとまるのでしょうか。
それは、小麦粉の中にあるタンパク質が水分を吸収し、
酵素の働きによって自然に「グルテン」を形成し始めるからです。
私たちは「こねてグルテンを作る」と思いがちですが、実際には、
水と出会った小麦粉は、時間を置くだけで自ら網目構造を作ろうとする力を持っています。
必死にこねなくても、生地は自分の力でまとまろうとする。
私たちはその「素材の力」を信じて、少しの間だけ見守ってあげればいいのです。
特に夏場は気温が高く、生地がダレやすくベタつきがちですが
この「オートリーズ」を取り入れるだけで、こねる時間は格段に短くなり
扱いやすさが劇的に変わります。

パン作りは子育てや人間関係と同じ。「触りすぎない」が未来を拓く
私がパン作りを通して皆さんに一番お伝えしたいのは、実はこの「触りすぎない技術」の本質です。
相手が自分でまとまろうとする力を信じる
パン作りをしていると、
「自分がなんとかしなきゃ」
「思い通りにコントロールしなきゃ」
というエゴが出てしまうことがあります。
でも、生地がベタついた時に
「あ、今は頑張る時じゃないんだな。少し休ませてあげよう」
と手を離せるかどうか。
これは、子育てや人間関係にも通じます。
大切な相手(子供やパートナー、部下など)が、なんだか不安定でまとまっていない時。
私たちはつい、良かれと思って「触りすぎて」しまいませんか?
アドバイスをしすぎたり、無理に型にはめようとしたり。
でも、パン生地と同じで、相手にも「自分でまとまろうとする力」が備わっています。
私たちがすべきことは、環境を整え(適切な温度と水分)、あとは信じて待つこと。
「触らない勇気」を持つことで、相手は自分の力で立ち上がり、
私たちが想像もしなかったような美しい成長を見せてくれるのです。
気泡がポコポコ入った、理想の「しっとりパン」を目指して

こうして「放置」という工程を経て焼き上がった高加水パンの断面を見てみてください。
そこには、「クラム」と呼ばれるパンの中身に、
ポコポコと不揃いで大きな気泡が入っているはずです。
この気泡があるということは、水分がしっかり保持され、糊化が行われた証拠。
表面はパリッと香ばしく、中は驚くほど瑞々しくてしっとり。
この美味しさを一度知ってしまうと、もうベタベタ生地は怖くありません。
むしろ「よし、今日もたっぷり水を飲ませてあげたぞ!」という誇らしい気持ちになれるでしょう!

まとめ|「触らない勇気」がパン作りをしなやかに変える
嫌われ者の「ベタベタ生地」は、実は美味しいパンになろうとしている希望の姿です ^ ^
もし次にパンを作る時、生地が手にまとわりついてイライラしそうになったら、
一度深呼吸をしてみてください。
「あ、この子は美味しいパンになろうとしているんだな」
「私の手を離れて、自分で頑張ろうとしているんだな」
そう思って、一度手を洗い、20分間だけコーヒーでも飲んでゆっくり待ってみてください。
その「触らない勇気」が、パンの味を格上げするだけでなく、
あなたの心にも「ゆとり」という発酵をもたらしてくれます。
天然酵母ぱん蔵では、こうした
「菌の声を聴く」
ような、自然の摂理に沿ったパン作りを提案しています。
もっと深く、この「しなやかな暮らし」について知りたい方は、
ぜひ無料のメールマガジンを覗いてみてくださいね!
パン作りが、そして毎日が、しっとり豊かに発酵していくことを願っています。




