今日のテーマは、
「ベーキングパウダーを使わない、香りと食感が劇的に変わる発酵菓子の深い世界」
についてお話ししたいと思います。
皆さんは、マフィンやパウンドケーキ、スコーンなどのお菓子を作るとき、何を入れますか?
小麦粉、バター、砂糖、卵…
そして、生地をふんわり膨らませるために
「ベーキングパウダー」
を使いますよね。
あるいは、ケーキ作りなら卵をしっかりと泡立てて、その気泡の力で膨らませるという方法もあるかと思います。
でも、私の教室「ぱん蔵」では、お菓子作りでもベーキングパウダーを使わないんです。
「えっ、じゃあ何を使って膨らませるの?」
「そんなことできるの?」
と驚かれることも多いのですが、パン教室ですので、代わりに何を使うかというと…
それは「酵母(こうぼ)」です。
先日、プロ向けの講座でこの「発酵菓子」のレッスンを行いました。
コースの中に組み込まれている内容なのですが、これがもう、生徒さんに大好評でして。
「先生、これすごく美味しいです!」
「香りが全然違う!」
「今まで食べていたお菓子は何だったの!?」
と、何人もの方が目を輝かせて言ってくださるんです。
私自身も、やっぱり発酵菓子は美味しいなぁと心から思います。
普通のお菓子とは、もう全然違う次元の食べ物なんですね。
でも、「発酵菓子」という言葉自体、まだあまり知られていないかもしれません。
「発酵菓子って何?」という方も多いと思います。
そこで今日は、一度食べたらもう戻れないかもしれない(笑)、
天然酵母で作る発酵菓子の魅力と、その深い世界について
じっくりお話ししたいと思います。

天然酵母ぱん蔵の 椿留美子です。
お山での田舎暮らしを実践、発酵生活をしています。
そんな暮らしを踏まえながら、東京と山梨で自家製酵母を使って、
発酵器を使わない、ほったらかしの「ゆるパン」教室を2009年より始めました。
現在は仕事で使いたい方、深く極めたい方向けのプロ向け講座をやっています。
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毎朝メールより音声配信をしています。
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発酵菓子とは?ベーキングパウダーのお菓子との決定的な違い
まずは、一般的なお菓子と発酵菓子の作り方の違いから見ていきましょう。
化学反応で膨らむ「即席」か、酵母が育てる「熟成」か

普通のお菓子作り(マフィンやスコーンなど)では、ベーキングパウダーや重曹を使います。
これらは、水分と熱が加わった瞬間に化学反応を起こして、一気にガスを発生させ、その力で生地を膨らませます。
だから、材料を混ぜ合わせたら、
「すぐにオーブンに入れて焼く」
というのが鉄則ですよね。
生地を寝かせてしまうと、ガスが抜けて膨らまなくなってしまいます。
これに対して「発酵菓子」は、パン作りと同じように「酵母の力」で膨らませます。
酵母菌が生地の中の糖分を食べて、炭酸ガスとアルコールを出しながら、
ゆっくりゆっくり生地を持ち上げていくんです。
ですから、生地を混ぜてから焼き上げるまでに、
数時間じっくりと発酵させる時間が必要になります。
手間ひまかけるからこそ生まれる「深み」

「えっ、数時間も待つの? めんどくさい…」
と思われた方、いらっしゃいましたか?(笑)
確かに、「混ぜてすぐ焼ける」という手軽さはありません。
でもね、この「待つ時間」こそが、すごく大事なんです。
ただ単に生地が膨らむのを待っているだけではありません。
この時間の間に、目に見えない酵母たちが一生懸命働いて、生地の中で
熟成
が進んでいるんです。
粉の芯まで水分を行き渡らせ、粉本来の旨みを引き出してくれています。
「待つ」といっても、基本的にはほったらかしでOKなので、実は作業自体はとても楽なんですよ。
家事をしたり、本を読んだりしている間に、酵母がお菓子を美味しく育ててくれる。
そう考えると、楽で美味しいものができる!楽しい時間に思えてきませんか?
一度食べたら戻れない!発酵菓子が持つ3つの魅力

プロ講座の中で、発酵菓子が焼き上がった時、オーブンを開けた瞬間に生徒さんが
「わぁっ!」
「おー!」
と歓声を上げることがよくあります。
そのふっくらとした膨らみにも驚かれるのですが、食べてみるとさらに驚きが待っています。
具体的にどんな違いがあるのか、3つのポイントに分けてお伝えしますね。
1. 香り:バターと酵母が織りなす芳醇なアロマ
まず一番の違いは「香り」です。
ベーキングパウダーには、基本的に香りはありません(種類によっては独特の匂いがする場合もありますが)。
でも、酵母は発酵中にアルコールや、フルーティーな香りの成分をたくさん生み出します。
お菓子作りで使うバターや卵の甘い香りに、酵母が生み出す複雑で芳醇な香りが重なると…
なんとも言えない、
ふくよかで奥行きのある「いい香り」♡
になるんです。
焼き上がりの香りを胸いっぱいに吸い込む瞬間は、本当に幸せな気持ちになります。
これも、発酵菓子作りならではの楽しみの一つですね。
2. 食感:サクほろではなく、しっとりもっちりの口どけ

次に「食感」です。
ベーキングパウダーを使ったお菓子(特にスコーンやマフィン)は、「サクッ」「ホロッ」とした食感になりますよね。
いわゆる「ザ・お菓子」という軽さです。
一方、発酵菓子の場合は、「しっとり」「もっちり」とした独特の食感になります。
そして何より、口どけが良いんです。
ケーキとパンの「いいとこ取り」をしたような、不思議な食感と言えば伝わるでしょうか。
例えばマフィンなら、食べた時に口の中の水分を奪われません。
パサパサして飲み物がないと食べられない…なんてことがないんです。
しっとりとした潤いが残るので、飲み物がなくても美味しく食べられるほどの
「保水力」があります。
これは、時間をかけて発酵させることで、粉と水分がしっかりと馴染んでいる証拠でもあります。
3. 満足感:心の空腹も満たす、エネルギーの密度

そして3つ目は「満足感」です。
生徒さんからもよく言われるのですが、
「食べた時の満足感が全然違う!」
とおっしゃいます。
酵母菌の力で膨らませたお菓子は、お腹にしっかりとたまります。
物理的な満腹感はもちろんですが、なんというか
「心と胃袋の満足感が高い」んです。
たった一つ食べただけでも、「あぁ、美味しいものを食べたな」という幸福感に包まれる。
エネルギーの密度が濃いというか、
丁寧に作られたもの特有のパワーがあるように感じます。
先日のレッスンでは、甘いパンの他にマフィンとケーキを作りましたが、
「これが酵母の力か…!」
と、何回作ってもその出来栄えに感動しますね。
身近にある発酵菓子:シュトレンやパネトーネも仲間

「発酵菓子って、あまり見たことないかも」
と思われるかもしれませんが、実はお店でもよく見かける有名なものがあります。
例えば、クリスマスの時期に食べるドイツの
「シュトレン」
それから、イタリアの
「パネトーネ」
これらはドライフルーツなどがたっぷり入っていますが、どちらも酵母を使って発酵させて作る
「発酵菓子」の代表格です。
これらに共通する特徴をご存知ですか?
そう
日持ちがする
こと、そして
日が経つほど美味しくなる
ことです。
シュトレンなどは、焼いてすぐ食べるよりも、1週間、2週間と寝かせてから食べる方が美味しいと言われますよね。
これはまさに「発酵の力」なんです。
時間が経つごとに素材同士が馴染み、熟成が進んで、味わいが深く変化していく。
「劣化」するのではなく、「熟成」していくお菓子。
これが発酵菓子の真骨頂です。

日々の生活の中では、なかなか出会う機会が少ないかもしれませんが、
こうした伝統的なお菓子にも酵母の知恵が生きています。
【プロ志向の方へ】発酵菓子が「選ばれるお店」の強みになる理由

私の教室には、プロを目指す方や、すでにパン屋さんやカフェをされている方も多く通われています。
そんな皆さんにこそ、私はこの「発酵菓子」をおすすめしています。
なぜなら、
パン屋さんの焼き菓子コーナーでも、まだ「発酵菓子」を置いているお店はほとんどないから
です。
普通のマフィンやスコーンは、どこでも買えます。
コンビニでもスーパーでも、手軽に手に入ります。
でも、「天然酵母でじっくり発酵させた、しっとりマフィン」は、まず見かけません。

だからこそ、これを自分で作れるようになる、あるいは商品化できるというのは、
ものすごい強み(差別化)になります。
「ここでしか食べられない味」
「一度食べたら忘れられない食感」
これをお客様に提供できることは、お店のファンを増やす大きな武器になるはずです。
実際にプロ講座の生徒さんたちも、この可能性に気づいて目を輝かせていました。
まとめ:待つ時間は、豊かさを育む時間
今日は「ベーキングパウダーを使わない発酵菓子の世界」についてお話ししました。
現代は、何でも「早く」「簡単に」「効率よく」できることが良しとされる時代です。
混ぜてすぐ焼けるお菓子も、もちろん便利で素晴らしいものです。
でも、あえて「時間をかけて育てるお菓子」を作る。

そこには、効率化では絶対に出せない「深み」があります。
酵母という生き物の力を借りて、ゆっくりと生地が変化していくのを待つ。
その時間は、ただの待ち時間ではなく、美味しさを育む豊かな時間です。
もしどこかで「酵母マフィン」や「発酵スコーン」といった名前を見かけたら、ぜひ一度食べてみてください。
お店で売っているものは、安定させるために酵母の他にベーキングパウダーやイーストを併用していることも多いですが、もし
「100%酵母で作りました」
というものに出会えたら、もう迷わず飛びついてほしいと思います(笑)。
発酵の世界はパンだけではありません。
お菓子の常識さえも変えてしまう、酵母の力。
本当に面白いので、機会があればぜひ、作ってみたり、食べてみたりしてほしいなと思います。

このブログでは、パン作りのこと、自家製酵母のこと、発酵食のこと、そして昔ながらの自然な生き方について発信しています。
今日のお話が、皆さんの暮らしの中で少しでもお役に立てたら嬉しいです。
それでは、今日も元気に頑張っていきましょう!



