パンのクープが開かない原因は乾燥?パックリ割れる蒸気のコツと裏技

天然酵母パン 作り方−ポイント、実験、裏話など

新しいアトリエに移ってだいぶ落ち着いてきました。

床も壁も無垢の木材をふんだんに使った、本当に気持ちの良い空間です。

 

でも実は最近、このアトリエである「悩み」を抱えているんです。

それは、夜のこと。

シーンと静まり返った部屋で仕事をしていると……

「ピキッ!!」

「ミシッ!!」

家の中から、結構ものすごい音が響き渡るんですよ(笑)。

これ、決してラップ音や心霊現象じゃありませんよ。

 

犯人は「乾燥」なんです。

この「乾燥」というキーワード。

実は、私たちが焼く天然酵母パンにとっても、最大の敵だということをご存知でしたか?

 

「一生懸命こねたのに、クープ(切り込み)が開かない」

「オーブンの中でパンが膨らまず、のっぺりしてしまう」

 

もしそんな悩みを抱えているなら、

その原因はあなたの腕前ではなく、

「オーブンの中の乾燥」

にあるかもしれません。

 

今日は、私の家のひび割れ事件から学んだ

パンを美しく開かせるための蒸気の重要性と、

家庭用オーブンでもクープをパックリ開かせるための

「とっておきの裏技」についてお話しします。

 

 

**************

天然酵母ぱん蔵の  椿留美子です。

お山での田舎暮らしを実践、発酵生活をしています。

そんな暮らしを踏まえながら、東京と山梨で自家製酵母を使って、

発酵器を使わない、ほったらかしの「ゆるパン」教室を2009年より始めました。

現在は仕事で使いたい方、深く極めたい方向けのプロ向け講座をやっています。

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パンのクープが開かない原因は乾燥?パックリ割れる蒸気のコツと裏技

 

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パンのクープが開かない!夜中のアトリエで気づいた意外な原因

乾燥で悲鳴を上げる無垢の木材たち

 

冒頭でお話しした、アトリエのラップ音騒動(笑)。

無垢の木というのは、生きているんですね。

 

空気中の水分を吸ったり吐いたりしながら、湿度に合わせて呼吸をしています。

特に冬場の乾燥する時期は、木に含まれる水分が抜けて、キュッと縮んでしまいます。

その縮む力に耐えきれなくなった時、「ピキッ!」と悲鳴を上げて割れてしまうんです。

これを「干割れ(ひわれ)」なんて言ったりします。

 

実はお気に入りのテーブルも、ついに乾燥でひびが入ってしまいました……(涙)。

 

それを見た時、私はハッとしたんです。

「硬い木でさえ、水分が抜けるとこんなに変化してしまう。

だったら、あんなに繊細で柔らかいパン生地にとって、乾燥はどれだけのダメージになるんだろう?」

 

ラップ音の正体は「ひび割れ」の前兆だった

物質の状態を保つために、空気中の水分って本当に大事なんですよね。

私はレッスンの間、生徒さんに

「生地を乾燥させないでくださいね」

「濡れ布巾をかけてくださいね」

と口を酸っぱくして言っています。

 

 

それは、パン生地の表面が乾いてしまうと、発酵がスムーズにいかなくなるから。

そして何より、

「焼く瞬間」の乾燥も、パンの見た目を左右する最大の要因になるんです。

 

ここで面白い対比が生まれます。

  • 木材は、乾燥すると「望まないひび割れ」を起こす。
  • パンは、乾燥すると「望んでいるひび割れ(クープ)」が起きなくなる。

 

そう、パン作りにおいては、乾燥は「割れ」を防ぐのではなく、

逆に「割れなくさせてしまう」のです。

 

 

なぜパンのクープは乾燥すると開かなくなるのか

オーブンの中は湿度0%の砂漠状態

 

 

予熱が完了したオーブンの中を想像してみてください。

 

200度、230度、あるいは250度という高温の熱風が吹き荒れています。

あの中は、水分なんて一瞬で蒸発してしまう、いわば灼熱の砂漠状態です。

 

そこに、水分をたっぷり含んだパン生地を裸のまま入れるとどうなるでしょうか?

生地を入れた瞬間、表面の水分が一気に奪われます。

中の生地が「さあ、これから熱を受けて膨らむぞ!」と準備運動をするよりも早く、

表面の皮(クラスト)だけがカチカチに乾燥して焼き固まってしまうのです。

 

パンの表面が先に固まると「釜伸び」できない

パンがオーブンの中でググッと大きく膨らむことを、専門用語で

「釜伸び(かまのび)」

と言います。

 

本当なら、オーブンの熱を受けて中のガスが膨張し、生地全体が大きく伸びていきたいはず。

でも、表面がすでに乾燥して「硬い殻」になってしまっていたらどうでしょう?

風船の外側をガムテープでガチガチに固めたようなものです。

中からどれだけ押しても、外側が伸びてくれないので、パンは膨らむことができません。

 

その結果、どうなるか。

  • クープ(切れ目)が開かない
  • 全体的に小さくこじんまりしてしまう
  • のっぺりとした、艶のない焼き上がりになる

 

これが、クープが開かない失敗の大きなメカニズムです。

 

理想的なクープはパンの「深呼吸」から生まれる

 

私たちが目指している「パックリと開いたクープ」。

あれは単なる飾りではありません。

パンの中のガスが勢いよく膨らみ、生地の伸びが限界に達した時、あらかじめ入れておいた切れ目から「メリメリッ!」と中身が飛び出してくる。

いわば、パンの深呼吸の跡なんです。

 

このダイナミックな動きを引き出すためには、

「生地が伸び切るまでは、表面を乾かしてはいけない」

ということになります。

 

 

家庭用オーブンでクープを成功させる「蒸気(スチーム)」の魔法

蒸気はパン生地の柔軟剤

 

そこで重要になるのが、「蒸気(スチーム)」です。

ハード系のパンを焼く時、最初の5分間くらいは、オーブンの中を湿気でムンムンにしておく必要があります。

 

蒸気が生地の表面につくと、どうなるでしょうか?

 

熱いオーブンの中でも、生地の表面が湿った状態を保てます。

皮がまだ柔らかいので、中のガスが膨らむ力に合わせて、

表面もスムーズに「にゅ〜っ」と伸びることができるんです。

 

言ってみれば、蒸気はパン生地にとっての「柔軟剤」みたいな役割を果たしているんですね。

 

湿気があるからこそ、メリメリとかっこよく割れる

表面がしっとりと柔らかいまま、中の生地が限界まで膨らむ。

そして、「もうこれ以上伸びられない!」というタイミングで、

クープの部分から生地が弾けるように開く。

 

この時、あの美しい「エッジ」が立ち、美味しそうな焼き色がついたパンが完成します。

 

アトリエのテーブルが乾燥で割れてしまったのとは対照的に、

パンは湿気があるからこそ美しく割れることができるのです。

 

*ちょっといびつだけど可愛い割れになった(笑)

 

 

道具で解決!今日からできるクープ対策の裏技

「でも先生、うちのオーブンにはスチーム機能がついていないんです」

「スチーム機能を使っても、なかなかうまくいきません」

そんな声が聞こえてきそうです。

 

そうなんですよね。

家庭用のオーブンは、業務用に比べてどうしても密閉性が低く、蒸気が外に逃げやすい構造になっています。

 

私も昔は、どうやったらクープが綺麗に開くか、本当に試行錯誤しました。

  • 焼き石(タルトストーン)を熱して、熱湯をジュッとかける
  • 生地を入れる瞬間に、霧吹きで庫内にシュッシュッと水を撒く

 

これらも効果はありますが、オーブンの故障の原因になったり、温度が下がってしまったりと、なかなか難しいものです。

 

そこで私がたどり着いた

初心者の方でも驚くほどクープが開く「裏技」を2つご紹介します。

 

1. スチームサウナを作る「鍋ごと焼き(ストウブ・ルクルーゼなど)」

 

一つ目の方法は、「蓋のできる鋳物ホーロー鍋(ストウブやルクルーゼなど)」に入れて焼く方法です。

やり方は簡単。

オーブンに入れる際、パン生地を鍋の中に入れて、蓋をして焼くだけです。

(※鍋の耐熱温度や、つまみがオーブン対応か必ず確認してくださいね)

 

こうすると、パン生地自身から出る水分が鍋の中に充満し、逃げ場を失います。

すると鍋の中は、超濃厚なスチームサウナ状態になります。

アトリエがどれだけ乾燥していようが、オーブン内がどれだけ砂漠だろうが、

鍋の中だけは「湿度100%」の熱帯雨林(笑)。

 

これなら、確実にクープが開きます。

 

2. 初心者さんにおすすめ!耐熱ボウルや型を被せるテクニック

「そんな重たい鍋、持っていないわ」という方も大丈夫。

もっと手軽な方法があります。

それは、「天板に乗せた生地の上から、耐熱容器を被せる」という方法です。

  • ステンレス製や耐熱ガラスのボウル
  • 食パンの型
  • ケーキの型

なんでも構いません。生地に触れない大きさで、耐熱性のものであればOKです。

これを「カポッ」と被せて、そのままオーブンで焼くのです。

 

逃げ場のない水分が最高の蒸気になる

理屈は鍋焼きと同じです。

被せたボウルの中に、パンから出る蒸気が閉じ込められます。

特別なスチーム機能がなくてもパン自身の水分を使って自分で自分を蒸し焼きにすることができるんです。

 

これなら、高い機材を買い足す必要もありませんよね。

 

焼き時間の前半(例えば最初の10分〜15分など)はこの状態で焼き、

後半は被せものを外して焼き色をつける。

 

たったこれだけで、見違えるようなクープに出会えるはずです。

 

 

まとめ:乾燥はお肌とパンの大敵!潤いのあるパン作りを

 

今日は、私のアトリエでの「ひび割れ事件」をきっかけに、

パン作りにおける「乾燥」「蒸気」についてお話ししました。

 

無垢のテーブルも、繊細なパン生地も、そして私たちのお肌も(笑)。

適切な湿気がないと、本来の良さを発揮できないんですね。

 

もし焼いたパンが

「うまく開かないな」

「膨らまないな」

と思ったら、自分を責める前に疑ってみてください。

 

 

オーブンの中が砂漠になっていないかな?と。

 

 

そして、ぜひ今回ご紹介した「鍋焼き」や「ボウル被せ」を試してみてください。

きっと、「私のパン、こんなに力強く開くんだ!」と感動するはずですよ。

 

 

私もこれ以上お気に入りのテーブルが割れないように、

ストーブに鍋を置いてせっせと蒸気を上げています。

 

 

みなさんも、風邪をひかないように湿度を保って、潤いのあるパン作りと暮らしを楽しんでくださいね。

 

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