天然酵母の元種が膨らまない?レシピの「時間」より大切なピークの見極め方

天然酵母パン 作り方−ポイント、実験、裏話など

今日は、生徒さんからも非常によくいただくお悩み、

「元種(発酵種)の見極め」

についてお話ししようと思います。

 

私の教室では「発酵種」と呼んでいますが、

一般的には「元種(もとだね)」と呼ばれることが多いですね。

 

パン作りをする上で、まさに心臓部とも言えるこの元種。

レシピ本にはよく、

「常温で一晩置く」

「◯時間発酵させる」

といった記載があると思います。

 

真面目な方ほど、この「時間」をきっちりと守ってくださるんですよね。

でも、なぜかうまくいかない。

 

「レシピ通りに時間を置いたのに、全然膨らまないんです」

「なんだか酸っぱいパンになってしまいました…」

 

そんな経験、皆さんにもありませんか?

 

実は、

「レシピの時間は信じてはいけない」

と言ったら驚かれるでしょうか。

 

今日は、時計を見るのをやめて、菌の顔を見て判断する「上級編」のお話です。

これを知って失敗知らずになれるだけでなく、

酵母と仲良く付き合っていけるようになりましょう!

 

**************

天然酵母ぱん蔵の  椿留美子です。

お山での田舎暮らしを実践、発酵生活をしています。

そんな暮らしを踏まえながら、東京と山梨で自家製酵母を使って、

発酵器を使わない、ほったらかしの「ゆるパン」教室を2009年より始めました。

現在は仕事で使いたい方、深く極めたい方向けのプロ向け講座をやっています。

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なぜレシピ通りに時間を置いても、元種作りで失敗するのか?

まず最初にお伝えしたいのは、

「なぜレシピ通りの時間で失敗するのか?」

という根本的な理由です。

 

それは、私たちが扱っているのが「生き物」だからです。

 

菌は生き物。気温や元気さで「ピーク」は毎日変わる

 

機械であれば、スイッチを入れて何分待てば同じ結果が出ます。

でも、天然酵母は生きています。

人間だって、暑い日は食欲が落ちたり、寒い日は布団から出たくなかったりしますよね(笑)。

 

酵母菌もそれと同じなんです。

 

  • その日の気温や湿度
  • 酵母自体の元気さ(活性度)
  • 仕込み水の温度

 

こういった環境の違いによって、発酵のスピードは人それぞれ、日それぞれ全く違います。

レシピに書いてある「一晩」とか「6時間」というのは、

あくまで「著者の環境でやった時の目安」に過ぎません。

 

あなたの家のキッチンと、レシピ本の先生のキッチンでは、環境が違って当たり前。

 

だから、時計だけを見て「時間になったからOK!」と判断してしまうと、

まだ準備ができていない酵母を無理やり起こすことになったり

逆に疲れ切ってしまった酵母を使うことになったりするのです。

 

大切なのは、時間ではなく「元種の状態(顔)」を見ること。

次章から、その具体的な見極めポイントをお伝えしますね。

 

 

プロが実践する「元種(発酵種)」のピークを見極める3つのサイン

では、元種が一番元気で、パン作りに最適な

「ピーク」の状態をどう判断すればいいのでしょうか?

 

私がいつもチェックしているのは、以下の3つのポイントです。

ぜひメモを取りながら読んでみてくださいね。

 

  1. 見た目
  2. 香り
  3. 弾力

 

一つずつ詳しく見ていきましょう。

 

【見た目】こんもりとした盛り上がりと、表面の「プツプツ(カニアナ)」

 

まずは視覚情報です。

透明なガラス瓶などで元種を作ると、横からの状態がよく見えます。

横から見た時

全体がググッと持ち上がっている状態になっているのが理想です。

酵母のガスが生地の中に溜まって、力強く押し上げている証拠ですね。

(※粉の種類によっては平らに近いこともありますが、盛り上がろうとする力が見えることが大事です)

 

上から見た時:

ここが重要です!

瓶の蓋を開けて上から覗いてみてください。

表面に、小さな気泡が「プツプツ」とできている状態が見えますか?

「カニアナ」みたいですね。

ご飯が炊けた時にできる穴(カニアナ)ってありますよね?

あれに似ているんですが、元種の場合は穴が開いているというよりは、

気泡でポコポコと盛り上がっているようなイメージです。

この「こんもり」と「プツプツ」が見えたら、かなり良い状態です。

 

*酵母の種類によっては穴の空いている状態もの物あります↓

 

 

【香り】フルーティーな甘さか、ツンとする刺激臭(アルコール臭)か

見た目以上に大事なのが、「香り」です。

五感を使って、しっかり匂いを嗅いでみてください。

 

ベストな状態:

フルーティーで、すごくいい香りがします。

 

酵母特有の芳醇な香りと、小麦の甘い香りが合わさったような、

思わず深呼吸したくなるような香りです。

これがピークのサイン。

 

危険なサイン(行き過ぎ):

逆に、発酵させすぎるとどうなるか。

「刺激臭」が出てきます。

  • アルコールのツンとする匂いが強くなる
  • 除光液(セメダイン)のようなシンナー系の匂いがする

 

もし、このような匂いがしてきら、

「あ、ちょっと待たせすぎちゃったな(過発酵)」と思ってください。

 

この香りのままパンを焼くと、酸味が強くなったり、ボリュームが出なかったりします。

 

【弾力】スプーンを入れた時に「プリッ」と網目状になっているか

 

最後は触感、つまり「弾力」です。

見た目と香りで「そろそろかな?」と思ったら、清潔なスプーンを入れてみましょう。

スプーンですくった時、中はどんな状態になっていますか?

 

ベストな状態:

中が細かい「網目状」になっていて、スプーンを入れた感触に

「プリッ」とした弾力があるのが正解です。

グルテンの膜がしっかりとガスを抱え込んでいる証拠ですね。

 

危険なサイン(行き過ぎ):

逆に、スプーンを入れた時に「ドロドロ〜っ」としていて

網目が保てずに崩れてしまうような状態。

これは、酵素がグルテンを分解しすぎてしまっているサインです。

こうなると、パン生地の骨格が作れなくなってしまいます。

 

【まとめ:ピークの3点セット】

  1. 見た目がこんもり&プツプツしている
  2. フルーティーな甘い香りがする
  3. 網目状でプリッとした弾力がある

 

もしレシピに「6時間」と書いてあっても、3時間でこの状態になっていれば、それがあなたの元種の正解(ピーク)です。

逆に、時間が過ぎてもまだこの状態になっていなければ、もっと待ってあげて大丈夫です。

 

 

もしピークを過ぎてしまったら?(ドロドロ・酸っぱい状態の正体)

「うっかり寝過ごして、ピークを過ぎてしまった…!」

そんなこともあると思います。

ピークを過ぎると、先ほどお伝えしたように、

  • 盛り上がりが落ちて(陥没して)、ベタッとする
  • ドロドロと水っぽくなる
  • アルコール臭や酸味が出る

という状態になります。これ「過発酵」になっている状態です。

 

この状態の元種を使ってパンを焼くと、

  • 酸っぱいパンになる
  • 窯伸び(オーブンでの膨らみ)が悪くなる
  • キメが粗くなる

といったことが起こりやすくなります。

「もったいないから使いたい!」という気持ちもわかりますが、美味しいパンを目指すなら、思い切って作り直すか、

リフレッシュ(種継ぎ)をして、元気な状態に戻してあげるのが近道かもしれませんね。

 

 

時計を捨てて「菌の声」を聴くと、パン作りは失敗知らずになる

 

今日はちょっと上級編のお話をさせていただきました。

最初は「見極めなんて難しそう…」と感じるかもしれません。

「美味しいって言っても、正解を知らないと比較できないよ」と思われるかもしれませんね。

でも、大丈夫です。

毎日観察すること経験を積むことが一番の近道です。

 

「昨日はこんな顔をしていたけど、今日はちょっと元気がなさそうだな」

「今日はすごくいい香りがする!」

 

そんな風に、ペットや植物に接するような気持ちで、毎日元種の様子を見てあげてください。

そうすると、自然と「あ、今がピークだ!」というのが感覚でわかるようになってきます。

これが分かれば、レシピの「時間」という呪縛から解放されます。

自分の生活リズムと、菌のリズムを合わせながら、もっと自由に、もっと楽しくパン作りができるようになりますよ。

 

この記事のまとめ

  • レシピの時間はあくまで目安。環境によって発酵速度は変わる。
  • ピークの見極めは「見た目」「香り」「弾力」の3つで行う。
  • 見た目は「こんもり&プツプツ」、香りは「フルーティー」、弾力は「プリッと網目状」。
  • ツンとする刺激臭やドロドロ感が出たら、ピークを過ぎているサイン。
  • 毎日観察して経験を積むことが、失敗知らずへの一番の近道。

 

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最後までお読みいただきありがとうございました!

皆さんの元種が、最高の状態でパンになれますように。

ぜひ、時計を見るのをやめて、瓶の中の小さな命と対話してみてくださいね ^ ^

 

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