今日は、生徒さんからも非常によくいただくお悩み、
「元種(発酵種)の見極め」
についてお話ししようと思います。
私の教室では「発酵種」と呼んでいますが、
一般的には「元種(もとだね)」と呼ばれることが多いですね。
パン作りをする上で、まさに心臓部とも言えるこの元種。
レシピ本にはよく、
「常温で一晩置く」
「◯時間発酵させる」
といった記載があると思います。
真面目な方ほど、この「時間」をきっちりと守ってくださるんですよね。
でも、なぜかうまくいかない。
「レシピ通りに時間を置いたのに、全然膨らまないんです」
「なんだか酸っぱいパンになってしまいました…」
そんな経験、皆さんにもありませんか?
実は、
「レシピの時間は信じてはいけない」
と言ったら驚かれるでしょうか。
今日は、時計を見るのをやめて、菌の顔を見て判断する「上級編」のお話です。
これを知って失敗知らずになれるだけでなく、
酵母と仲良く付き合っていけるようになりましょう!

天然酵母ぱん蔵の 椿留美子です。
お山での田舎暮らしを実践、発酵生活をしています。
そんな暮らしを踏まえながら、東京と山梨で自家製酵母を使って、
発酵器を使わない、ほったらかしの「ゆるパン」教室を2009年より始めました。
現在は仕事で使いたい方、深く極めたい方向けのプロ向け講座をやっています。
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なぜレシピ通りに時間を置いても、元種作りで失敗するのか?
まず最初にお伝えしたいのは、
「なぜレシピ通りの時間で失敗するのか?」
という根本的な理由です。
それは、私たちが扱っているのが「生き物」だからです。
菌は生き物。気温や元気さで「ピーク」は毎日変わる

機械であれば、スイッチを入れて何分待てば同じ結果が出ます。
でも、天然酵母は生きています。
人間だって、暑い日は食欲が落ちたり、寒い日は布団から出たくなかったりしますよね(笑)。
酵母菌もそれと同じなんです。
- その日の気温や湿度
- 酵母自体の元気さ(活性度)
- 仕込み水の温度
こういった環境の違いによって、発酵のスピードは人それぞれ、日それぞれ全く違います。
レシピに書いてある「一晩」とか「6時間」というのは、
あくまで「著者の環境でやった時の目安」に過ぎません。
あなたの家のキッチンと、レシピ本の先生のキッチンでは、環境が違って当たり前。
だから、時計だけを見て「時間になったからOK!」と判断してしまうと、
まだ準備ができていない酵母を無理やり起こすことになったり
逆に疲れ切ってしまった酵母を使うことになったりするのです。
大切なのは、時間ではなく「元種の状態(顔)」を見ること。
次章から、その具体的な見極めポイントをお伝えしますね。
プロが実践する「元種(発酵種)」のピークを見極める3つのサイン
では、元種が一番元気で、パン作りに最適な
「ピーク」の状態をどう判断すればいいのでしょうか?
私がいつもチェックしているのは、以下の3つのポイントです。
ぜひメモを取りながら読んでみてくださいね。
- 見た目
- 香り
- 弾力
一つずつ詳しく見ていきましょう。
【見た目】こんもりとした盛り上がりと、表面の「プツプツ(カニアナ)」

まずは視覚情報です。
透明なガラス瓶などで元種を作ると、横からの状態がよく見えます。
横から見た時
全体がググッと持ち上がっている状態になっているのが理想です。
酵母のガスが生地の中に溜まって、力強く押し上げている証拠ですね。
(※粉の種類によっては平らに近いこともありますが、盛り上がろうとする力が見えることが大事です)
上から見た時:
ここが重要です!
瓶の蓋を開けて上から覗いてみてください。
表面に、小さな気泡が「プツプツ」とできている状態が見えますか?
「カニアナ」みたいですね。
ご飯が炊けた時にできる穴(カニアナ)ってありますよね?
あれに似ているんですが、元種の場合は穴が開いているというよりは、
気泡でポコポコと盛り上がっているようなイメージです。
この「こんもり」と「プツプツ」が見えたら、かなり良い状態です。
*酵母の種類によっては穴の空いている状態もの物あります↓

【香り】フルーティーな甘さか、ツンとする刺激臭(アルコール臭)か
見た目以上に大事なのが、「香り」です。
五感を使って、しっかり匂いを嗅いでみてください。
ベストな状態:
フルーティーで、すごくいい香りがします。
酵母特有の芳醇な香りと、小麦の甘い香りが合わさったような、
思わず深呼吸したくなるような香りです。
これがピークのサイン。
危険なサイン(行き過ぎ):
逆に、発酵させすぎるとどうなるか。
「刺激臭」が出てきます。
- アルコールのツンとする匂いが強くなる
- 除光液(セメダイン)のようなシンナー系の匂いがする
もし、このような匂いがしてきら、
「あ、ちょっと待たせすぎちゃったな(過発酵)」と思ってください。
この香りのままパンを焼くと、酸味が強くなったり、ボリュームが出なかったりします。
【弾力】スプーンを入れた時に「プリッ」と網目状になっているか

最後は触感、つまり「弾力」です。
見た目と香りで「そろそろかな?」と思ったら、清潔なスプーンを入れてみましょう。
スプーンですくった時、中はどんな状態になっていますか?
ベストな状態:
中が細かい「網目状」になっていて、スプーンを入れた感触に
「プリッ」とした弾力があるのが正解です。
グルテンの膜がしっかりとガスを抱え込んでいる証拠ですね。
危険なサイン(行き過ぎ):
逆に、スプーンを入れた時に「ドロドロ〜っ」としていて
網目が保てずに崩れてしまうような状態。
これは、酵素がグルテンを分解しすぎてしまっているサインです。
こうなると、パン生地の骨格が作れなくなってしまいます。
【まとめ:ピークの3点セット】
- 見た目がこんもり&プツプツしている
- フルーティーな甘い香りがする
- 網目状でプリッとした弾力がある
もしレシピに「6時間」と書いてあっても、3時間でこの状態になっていれば、それがあなたの元種の正解(ピーク)です。
逆に、時間が過ぎてもまだこの状態になっていなければ、もっと待ってあげて大丈夫です。
もしピークを過ぎてしまったら?(ドロドロ・酸っぱい状態の正体)
「うっかり寝過ごして、ピークを過ぎてしまった…!」
そんなこともあると思います。
ピークを過ぎると、先ほどお伝えしたように、
- 盛り上がりが落ちて(陥没して)、ベタッとする
- ドロドロと水っぽくなる
- アルコール臭や酸味が出る
という状態になります。これ「過発酵」になっている状態です。
この状態の元種を使ってパンを焼くと、
- 酸っぱいパンになる
- 窯伸び(オーブンでの膨らみ)が悪くなる
- キメが粗くなる
といったことが起こりやすくなります。
「もったいないから使いたい!」という気持ちもわかりますが、美味しいパンを目指すなら、思い切って作り直すか、
リフレッシュ(種継ぎ)をして、元気な状態に戻してあげるのが近道かもしれませんね。
時計を捨てて「菌の声」を聴くと、パン作りは失敗知らずになる

今日はちょっと上級編のお話をさせていただきました。
最初は「見極めなんて難しそう…」と感じるかもしれません。
「美味しいって言っても、正解を知らないと比較できないよ」と思われるかもしれませんね。
でも、大丈夫です。
毎日観察すること、経験を積むことが一番の近道です。
「昨日はこんな顔をしていたけど、今日はちょっと元気がなさそうだな」
「今日はすごくいい香りがする!」
そんな風に、ペットや植物に接するような気持ちで、毎日元種の様子を見てあげてください。
そうすると、自然と「あ、今がピークだ!」というのが感覚でわかるようになってきます。
これが分かれば、レシピの「時間」という呪縛から解放されます。
自分の生活リズムと、菌のリズムを合わせながら、もっと自由に、もっと楽しくパン作りができるようになりますよ。
この記事のまとめ
- レシピの時間はあくまで目安。環境によって発酵速度は変わる。
- ピークの見極めは「見た目」「香り」「弾力」の3つで行う。
- 見た目は「こんもり&プツプツ」、香りは「フルーティー」、弾力は「プリッと網目状」。
- ツンとする刺激臭やドロドロ感が出たら、ピークを過ぎているサイン。
- 毎日観察して経験を積むことが、失敗知らずへの一番の近道。
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最後までお読みいただきありがとうございました!
皆さんの元種が、最高の状態でパンになれますように。
ぜひ、時計を見るのをやめて、瓶の中の小さな命と対話してみてくださいね ^ ^




