国産小麦で焼くと「別物になる」理由を、
天然酵母パン講師が解説。
・タンパク質の差
・ポストハーベスト問題
・はるゆたかブレンドの選び方
・オートリーズのコツまで
20年の経験から語ります。

天然酵母ぱん蔵の 椿留美子です。
お山での田舎暮らしを実践、発酵生活をしています。
そんな暮らしを踏まえながら、東京と山梨で自家製酵母を使って、
発酵器を使わない、ほったらかしの「ゆるパン」教室を2009年より始めました。
現在は仕事で使いたい方、深く極めたい方向けのプロ向け講座をやっています。
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国産小麦で焼くと「別物になる」——外国産との違いと、天然酵母との相性を、20年の経験から語ります
ある日、生徒さんが国産小麦のパンを一口食べて、こう言いました。
「小麦ってこんな香りがするんですね」
パンを食べて、小麦の香りがする。
当たり前のようで、外国産小麦ではなかなかそういう体験をしたことがない、という方が多いんですよね。
国産小麦と天然酵母が合わさった時の香り——
それだけで「日本のパンだ」という感じがします。
今日は、その理由と、私が20年近く国産小麦を使い続けてきた経緯を、少しお話しさせてください。
私が国産小麦を選んだ、もう一つの理由——ポストハーベストという問題

私が天然酵母を始めた時の最初の先生が、国産小麦を使っていました。
「天然酵母との相性がいいから」
という理由もあったんですが、もう一つ、先生から教えてもらったことがずっと頭に残っていて。
それが
ポストハーベスト問題
です。
ポストハーベストとは、収穫後の農産物に使われる農薬のことで、輸送や保管中のカビ・虫を防ぐために使われます。
日本国内では「食品添加物」として扱われますが、
そもそもの出どころは農薬なんですね。
さらに近年では、アメリカやカナダで
収穫前にグリホサート(除草剤)を散布する
「プレハーベスト処理」
が広く行われていることがわかってきています。
農作業を均一にして効率を上げるための手法ですが、輸入小麦からの検出が確認されていて、
2017年には日本のグリホサート残留基準値が小麦において
5ppm → 30ppmへ、6倍に緩和されました。
「基準値の範囲内なので安全」という公式見解はあります。
でも——
そもそも、そういうものを毎日食べることに、私は納得できているか。
その問いが、私の中にずっとあったんです。
当時、子供がアレルギーを持っていて、食の安全について
とても敏感になっていた時期でもありました。
オーガニックのもの
添加物の少ないもの
顔の見える農家さんのもの
そういうものを選びたい、という気持ちが自然と国産小麦へと向かわせてくれました。
外国産との「一番の違い」はタンパク質の量にある

では、実際の焼き上がりとして、何が違うのでしょうか。
2〜3%の差が生む、食感と香りの分かれ道
一番大きな違いは、タンパク質の含有量です。
外国産の強力粉 → タンパク質 12〜13%
国産小麦 → タンパク質 10〜11%
この差がグルテンの強さに直結します。
外国産はグルテンが強くなりやすいので、ふわっと大きく膨らむパンが焼きやすい。
国産はその分グルテンが弱めで、生地がやわらかく扱いにくいかわりに、
クラムがしっとりして、もちっとした噛みごたえが生まれます。
外国産のふわふわとは違う、
噛むほどに出てくる旨味みたいなもの、とでも言えばいいでしょうか。
どちらが良い・悪いではなくて、違う個性なんですよね。
天然酵母×国産小麦が「最高の組み合わせ」になる理由
天然酵母はゆっくり時間をかけて発酵します。
国産小麦も、ゆっくり熟成させることで旨味と香りが際立ちます。
この「急がない」という哲学が、両者に共通しているんです。
だから相性がいい。
天然酵母の酸味と旨味、国産小麦の甘みと香り。
それが合わさった時、「これが日本のパンだ」という感じがします。
私が今使っている粉——「はるゆたかブレンド」を選んだわけ

国産小麦にも、いくつか品種や商品があります。
「春よ恋」「ゆめちから」「キタノカオリ」……
私もいくつか試してきて、今は
はるゆたかブレンド
に落ち着いています。
食パンで食べ比べたんです。
食パンってシンプルな分だけ、小麦の旨味がダイレクトに出るんですよね。
100%の単一品種よりも、ブレンドの方が旨味のバランスが好みだなと感じて。
何度か行ったり来たりして、最終的にここに戻ってきました(笑)。
どれが正解ということはないので、ぜひご自身でも食べ比べてみてください。
食パンで試すのが、一番わかりやすいと思います。
国産小麦がうまくいかない時のポイントは、たった一つ

「国産小麦は難しい」というイメージをお持ちの方も多いと思います。
外国産と同じような感覚でこねると、うまくいかないことがあるのは確かです。
「急かさないこと」——これに尽きます
外国産みたいにしっかりこねてグルテンを出そうとすると、生地がだれてしまいます。
こねる時間を短くして、休ませる時間をたっぷり取る
水分量も、少し調整が必要です。
「待つ」ことが、国産小麦をおいしくするコツです。
天然酵母と同じですね。
オートリーズを試してみてください
粉と水だけをざっくり混ぜて、30分ほど放置する。
そうするだけで、グルテンが自然に形成されていきます。
これが「オートリーズ」という方法です。
「こねなくていいの?」と最初は半信半疑になる方が多いんですが、
やってみると手ごたえが全然違います。
詳しい方法は別記事にまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
[オートリーズについて]↓
ベタベタ生地は「美味しさ」の証!高加水パンを失敗させない「触りすぎない技術」と待つ勇気
国産小麦を選ぶことが、日本の農業を変えていくかもしれない

現在、日本で使われる小麦の約85%は輸入に頼っています。
北海道はもちろん、長野、山梨、九州——
頑張っている農家さんがたくさんいるのに、なかなか国内消費が増えない現実があります。
私が天然酵母パンを教えているのは、
おいしいパンを焼いてほしいというだけじゃなくて、
食を自分ごとにしてほしい
という想いがあるからです。
小麦粉ひと袋を手に取る時に、「これ、どこの小麦?」と一瞬でも考える人が増えたら、
日本の農業も、パン文化も、少しずつ変わっていくと思っています。
ちょっと大げさかもしれないけど(笑)、本気でそう思っています。
まとめ——「小麦の香りってこんな香りなんですね」という体験を

国産小麦を初めて食べた生徒さんが、感動しながら言った言葉。
「小麦ってこんな香りがするんですね」
それを、ぜひ体験してみてください。
難しそうに見えるかもしれないけれど、
「急かさないこと」
「オートリーズを活用すること」
この2点を意識するだけで、ぐっとうまくいきやすくなります。
国産小麦で焼くと、本当に「別物」になります。
一度体験したら、きっとわかってもらえると思います。
より深く学びたい方は、ぜひ基礎マスタープロコースの個別面談へ。
話を聞くだけでも大丈夫。お気軽にどうぞ。




