私が教室でもずっと作り続けているパンがあります。
砂糖の代わりに、甘酒を使うパンです。
今日は、このパンが生まれたきっかけと、
教室で一番人気になっている理由についてお話ししたいと思います。

天然酵母ぱん蔵の 椿留美子です。
お山での田舎暮らしを実践、発酵生活をしています。
そんな暮らしを踏まえながら、東京と山梨で自家製酵母を使って、
発酵器を使わない、ほったらかしの「ゆるパン」教室を2009年より始めました。
現在は仕事で使いたい方、深く極めたい方向けのプロ向け講座をやっています。
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砂糖の代わりに、甘酒で。噛むほどに旨味が広がる「甘酒くるみパン」
きっかけは、生徒さんのひと言から

このパンを作るようになったのは、ある時期の生徒さんたちの声がきっかけでした。
「お砂糖を使いたくないんです」
もともと教室では、白砂糖ではなくてんさい糖を使っていました。
それを理由に、私の教室を探してきてくださった方もいたほどです。
お砂糖そのものに気になる気持ちがある生徒さんが、
続けて何人かいらっしゃった時期がありました。
ちょうど発酵への関心が広がりつつあった頃でもあり、お砂糖の代わりに発酵の力を借りられないかと考えるようになったんです。
そうして行き着いたのが、甘酒でした。
ちょうど発酵という言葉が、テレビや雑誌でも見かけるようになってきた時期でもありました。
砂糖の代わりに、発酵の力を借りて味わい方そのものを変えられないか。
そんな発想から、レシピを考えてみようと思ったのです。
甘酒は「発酵させた甘み」

甘酒には、麹で作るものと、酒粕で作るものの2種類があります。
私が使っているのは、お米と麹だけで作る、発酵の甘みのほうです。
麹の酵素が、お米のでんぷんをじっくり糖に変えてくれる。
そうして生まれる甘さなので、白砂糖のようなはっきりした甘さとは違って、優しくて奥行きのある甘さになります。
生地に入れてみると、甘さだけでなく食感も変わります。
甘酒に含まれる酵素や水分のおかげで、生地がまとまりやすくなり、焼き上がりもしっとりします。
以前お話しした酒種酵母のしっとり感とも、実は少し共通するところがあるように感じています。
発酵由来の水分や酵素が、生地にやわらかさを与えてくれるという点です。
一番人気は「甘酒くるみパン」

私の教室で特に人気なのが、「甘酒入りくるみパン」です。
基礎マスタープロコースには、生徒さんが好きなパンを選んで作るカスタマイズレッスンがあります。
そこでメニューに迷っている方に、よくおすすめしているのがこのパンです。
写真にすると少し地味なので、最初は気づかれにくいのですが笑
食べるとみなさんとても喜んでくれます。
甘酒のほんのりした甘さと、くるみの香ばしさ、生地そのものの旨味。
この3つが重なって、噛むほどに旨味が広がる味わいになります。
以前、実際に販売していた時期もあったのですが、こちらもよく売れていました。
甘いお菓子パンとは違う、じっくり味わえるパンとして選んでくださる方が多かったです。
食パンでも試作したことはあるのですが、くるみパンほど甘酒の良さを感じられる仕上がりにはなりませんでした。
家族にも好評で、子どもたちもこのパンが好きでした。
甘いお菓子のようにはっきり甘いわけではないのに、なぜか手が伸びてしまう。
そういうパンなのだと思います。
家で試すときの、小さなコツ

甘酒をいきなり全量置き換えると、生地がゆるくなりすぎたり、発酵のバランスが崩れることがあります。
まずは、レシピのお砂糖の半分くらいを甘酒に置き換えるところから試してみてください。
甘酒には水分が含まれているので、こねながら生地の様子を見て、
水分量を少し調整するのがポイントです。
数字通りにいかないところが、発酵の面白さでもあります。
くるみは、細かく刻んで生地になじませると、油分が全体に広がって美味しくなります。
大きめのまま入れて食感を楽しみたい生徒さんもいるので、そこはお好みで大丈夫です。
混ぜ込む前に軽くローストしておくと、香ばしさがぐっと引き立ちます。

味わいを変えるのは、レシピの正確さより一口の素直さ
甘酒は、パンだけでなく、いろいろな料理にもそっと使えます。
ドレッシングに少し混ぜたり、煮物やソースのコクだしに使ったり。
砂糖のようにはっきり甘くするというより、旨味を足すという感覚に近いです。

甘酒は冷凍でストックしておくと、使いたい分だけ取り出せて便利です。
私が私が主宰している「ゆるり発酵サロン」では、みんなで甘酒を仕込むこともあります。
発酵サロンのレシピ教科書にも、甘酒を少し加えるレシピがいくつも掲載していて活用していただいています。
パンに限らず、暮らしの中に甘酒を取り入れる方法は、思っているよりずっとたくさんあります。
生徒さんにこのパンをお伝えするとき、私が大事にしているのは、難しい説明を先にしないことです。
「体にいいですよ」だけで終わらせずに、まず食べてもらう。
一口食べて美味しいと感じてもらえたら、それだけでOKだと思っています。
そこから、「実はこれ、砂糖じゃなくて甘酒なんですよ」と種明かしをする。
すると、発酵のすごさが、頭ではなく舌から伝わっていきます。
砂糖の代わりに、甘酒。
たったそれだけの置き換えで、パンの表情はぐっと変わります。
特別な材料や難しい技術がなくても、
台所にある一つの置き換えだけで、味わいはちゃんと変わってくれる。
そのことに気づけるかどうかは、
レシピの正確さよりも、まず一口食べてみる素直さにかかっているのかもしれません。
生徒さんの何気ないひと言から生まれたパンが、
これほど長く愛されるとは、レシピを考えた当時は思ってもいませんでした。

小さな積み重ねが、暮らしの味わいを少しずつ育てていくのだと思いました。
自家製酵母を作ってみたい!と思ったらまずはここから始めてみて!





