形が崩れたパンを長野の農業高校へ持参したら
「こんなパンを売っているところはない」
「すぐ行列ができます」
と大絶賛。
見た目ではなく中身・素材・発酵の力が伝わった体験と、
本物をわかってくれる人と深くつながることの大切さを綴ります。

天然酵母ぱん蔵の 椿留美子です。
お山での田舎暮らしを実践、発酵生活をしています。
そんな暮らしを踏まえながら、東京と山梨で自家製酵母を使って、
発酵器を使わない、ほったらかしの「ゆるパン」教室を2009年より始めました。
現在は仕事で使いたい方、深く極めたい方向けのプロ向け講座をやっています。
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形がイビツでも「行列ができる」と言わせたパン——本物が伝える力について
昨日、長野の農業高校に行ってきました。
朝急いで作ったパンを4種類持参したのですが、形が少し崩れてしまって・・・
申し訳ないな、と自分でも気になりながら持っていったのですが、
試食していただいたら先生も生徒さんたちも大喜びしてくださいました。
先生からは
「こんなパンを売っているところはないです!」
「これはすぐ行列ができますよ!!」
そう言っていただきました。
形なんか、誰も見ていなかったんです(苦笑)
その日の出来事から、改めて感じたことをお伝えします。
長野の農業高校で、形が崩れたパンを持っていった日
地元の赤松・松の葉酵母から始まったご縁

この農業高校には、少し変わった素敵なコースがあります。
地元の食材や素材を使って、地域の人たちと交流しながら何かを生み出していく、
そういうコースです。
昨年は2年生の生徒さんたちと、地元の赤松から起こした松の葉酵母を使ってパン作りをしました。
その時の生徒さんたちが今年3年生になり、今度は商品開発・実際の販売までやってみたいということで、今回はその打ち合わせに伺いました。
その時の体験ブログはこちら
松の酵母で発酵!地域食材から生まれた天然酵母パン|高校生と挑んだパン作り体験記

朝の慌ただしさで、形がイビツなパンを持参することに
どんなパンが作れるか、地元の素材を使ってどんなことができるか、一緒に考えていくための試作として、パンを4種類用意しました。
ただ、朝の慌ただしい中で作ったため、形が少し崩れてしまったものがあって…
見た目がイビツなまま持っていくことになり、内心ずっと気になっていました。
味を楽しんでいただけたらいい、と自分に言い聞かせながら向かいました。
想像を超えた反応——「こんなパンを売っているところはない」
打ち合わせの後、先生と生徒さんたちに試食していただくと、全員の反応が想像をはるかに超えていました。
「美味しい!」
という声が何度も続いて、先生も
「これは美味しい!」
と繰り返してくださって。
パンをよく買いに行くという先生が、こう言ってくれました。
「長野にはパン屋さんがたくさんあって、よく買いに行くんですけど、こんなパンを売っているところはないです」
「これはすぐ行列ができますよ」
「椿さん、すごいですね」
帰り際にも何度も言ってくださいました。
一番人気だったのは、一番シンプルなパンだった

4種類持っていった中で、一番喜んでいただいたのが一番プレーンなパンでした。
食パンの生地で作った、小さなミニ食パン。
余計なものが何も入っていない、シンプルなパンです。
今回はレーズン酵母で焼いたものです。
飾り気がないからこそ、素材と発酵の味がそのまま伝わった。
そういうことだったのだと思います。
形なんか、誰も見ていなかった
形が崩れているとか、見た目が揃っているとか、
そういうことは誰も気にしていませんでした。
口に入れた瞬間に、全部伝わっていたんです。
本質は見た目ではなく中身——天然酵母と発酵の力
形が揃っている、見た目が綺麗、というのはできているに越したことはありません。
でも本質は、そこではありません。
中身がいいもの、素材がいいもの、発酵がちゃんと生きているもの
——それは、見た目がどうであれ、ちゃんと伝わります。
イーストのパンとの、決定的な違い

世の中に流通しているパンのほとんどは、イーストで作られています。
数の上では比べ物にならないほどイーストパンが主流で、多くの方がそちらに慣れています。
昨日の農業高校のある場所はとても田舎で、
生徒さんの中には天然酵母のパンをほとんど食べたことがない方も多かったと思います。
それでも、口に入れた瞬間に「美味しい!」と体が反応してくれた。
本物の味は、食べた瞬間に伝わる
手を抜いていない
素材がいい
発酵をちゃんと生かしている
そういうものは、説明しなくても伝わります。
本質が、人の心を動かすのだと思いました。
野菜の「ハネだし」が教えてくれること

これはパンだけの話ではありません。
私がやっているゆるり発酵サロンで先日、トウモロコシと野菜のセットをお送りしました。
農家さんとよく話すのですが、農協や市場では見た目をとても重視していて、形が揃っていない野菜は「ハネだし」として弾かれてしまうそうです。
見た目が揃っていなくても、ファンがつく
でも、その「ハネだし」の野菜が本当に美味しいものだと、ハネだしにファンがつきます。
市場より安く買えることもあって、熱心なリピーターになってくれる方が必ずいます。
見た目が揃っているかどうかより、美味しいかどうか。
それだけを基準に選んでくれる人が、確かにいます。
リピーターは「本物の味をわかる人」

逆に言えば、見た目だけで選ぶお客さんはリピーターになりません。
形が綺麗なものを揃えることで最初の一回は手に取ってもらえても、
「また欲しい」
「ここじゃないとだめ」
という気持ちは、中身が伴っていないと生まれません。
中身を好んでくれる人だけが、リピーターになります。
だから私は、まず目の前の一人に全力を尽くすことを選んでいます。
その一人が喜んでくれたら、その声が次の誰かに届く。
それが天然酵母パンの広がり方だと思っています。
行列より、深い縁を選ぶ
「行列ができる」と言っていただいた言葉は、本当に嬉しかったです。
でも私が本当に目指しているのは、行列ではありません。
広く浅くより、深く少人数という選択

たくさんの人に届けようとして、見た目を整えることに力を注ぐより
本物の味をわかってくれる人に、ちゃんと届けることを選ぶ。
天然酵母のパンや発酵食は、そういう道を歩むものだと思っています。
本物の目を持つお客さんと、深くつながっていく
厳しい言い方をすれば「形が揃っていないから」という理由で
離れていく人がいたとしても、それはご縁がなかったということです。
形ではなく、中身に感動してくれる人。
食べた瞬間に「美味しい!」と体が動いてくれる人。
そういう方と深くつながっていくことが、私なりの考え方です。
個人事業だからこそできること。
天然酵母パンの仕事の考え方です。
昨日の農業高校での体験が、そのことをまた教えてくれました。

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