パン作りの時に油脂を使いますか?
レシピに書いてあるものなら使う、という方がほとんどかと思いますが
そのレシピにもショートニング、バターなどのいろいろな油脂をつかっていますよね。
では、ショートニングやバター、植物油ってどうして
レシピによって使い分けているの?と疑問に思うことがありますか?
今日はその使い分けについてのお話をします。

天然酵母ぱん蔵の 椿留美子です。
お山での田舎暮らしを実践、発酵生活をしています。
そんな暮らしを踏まえながら、東京と山梨で自家製酵母を使って、
発酵器を使わない、ほったらかしの「ゆるパン」教室を2009年より始めました。
現在は仕事で使いたい方、深く極めたい方向けのプロ向け講座をやっています。
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パン作りで使う油脂は「バター」と「オイル」の2種類?
「このレシピの油脂は、バターじゃないとダメですか?植物オイルでもいいですか?」
こんな質問を生徒さんからいただくことがあります。
特に自家製酵母パンを作っている方や健康志向で「パン バターなし」に
挑戦したい方にとって、油脂選びは重要なテーマです。
今回は、自家製酵母パン講師の視点から
「バター」と「オイル」の違い
使い分けのポイント
そして
パン作りへの影響
をわかりやすく解説します。
このお話を動画でご覧になりたい方はこちらからどうぞ。
パン作りにおける油脂の種類について
皆さんはパンにどんな油脂を使いますか?バター オイル?
パンの生地の中にどんな油脂が入っているものが好きですか?
「断然バター派!!あのバターの香りがたまりません」
という方もいらっしゃるでしょう。
リッチなお菓子には卵とバターが多く使われているものが多いです。
それが好きな方はあの「乳臭さが好き」という声が聞かれます(笑)
バターの種類や製造元によっても香りが違ってくるので、
こだわりのある方もいらっしゃるでしょう。
逆に「あの乳臭さが苦手」という方もいらっしゃいます。
牛乳が苦手な人も多いです。
アレルギーなどの体質や体調などの理由で乳製品を取らない方も増えてきました。
いろいろな事情や好みがある中で、
パンに使う油脂はどんなものがあるでしょうか。
代表的なものの中には
バター
ショートニング
マーガリン
植物性油
(菜種油、オリーブオイル、香りをよくするためにごま油など)
というものがあげられます。
主に、バターやショートニングを使うことが多いかもしれません。
以前他の教室に通っていらした生徒さんも、
「習うパンのほとんどはバターやショートニングが入っていた」
とおっしゃっていました。
(うちでは入れないメニューが多いので驚かれていました)
市販の原材料を見てもほぼ9割以上のパンに油脂が入っているように思います。
なぜ油脂を入れたものが多いのか?
という疑問を持たれる方も多いかもしれません。
そもそも油脂とは?個体油脂と液体油脂の違い
油脂を入れる効果としては、
「生地の伸びのよさ」「日持ちがよくなる」といったことです。
パン作りに使う油脂は、大きく分けて
個体油脂(バターやショートニングなど)
液体油脂(菜種油、オリーブオイルなど)
があります。
個体油脂(バター、ショートニングなど)
常温で固形。(種類によって融解温度が変わります)
特に個体油脂は「可塑性(かそせい)」といって粘土のように、柔軟性があり
形を変えることができるものです。
その性質のおかげでグルテン膜に沿って入り込み伸びがよくなります。
液体油脂(植物性オイル)
常温で液体。
逆に液体油脂はグルテンの中に入りにくく逆に膨らみにくい傾向があります。
こねる時は水分と一緒に入れてこね上げていくと馴染んでいきやすいです。
他にはパンに野菜などを混ぜ込んで素材の色を付けたいとき、
植物油の方が色がきれいに出ない、ということがあるので
そう言う時は個体油脂を使った方がいいですね。
その様々な油脂の種類によって出来上がりにどんな違いがあるのか?
それぞれ特性が異なるため、仕上がりのイメージに合わせた選び方が大切です。
バターやショートニングの効果についてはこちらの記事にも書いていますので
よかったらご参考にしてください。
「バター、ショートニングなどは入れた方がいいの?油脂を入れるとどんな効果があるのか」
パン作りでの特性と使い分け方 バターとオイル、その他の油脂
香り・コクを引き出すなら「バター」
バターの基本特性は「香り」「コク」。
リッチなパンにしたいときはバターを使います。
先ほども言いましたが、あの「香り」がリッチさを出すんですね。
お菓子系のパンにする時、香り豊かに仕上げたい時はバターを使うことが多いです。
独特の乳製品の香りが高級感のあるお菓子やケーキを連想させてくれます。
その香りとコクを求めるパンにはバターを使います。
プレゼントやパーティ、クリスマスなどの行事にはそんなパンを作ることが多いでしょう。
シュトーレンやパネトーネなどもバターを多く使います。
発酵中も香りがふわっと広がり、焼き上がりの風味が格別です。
また生地がしっとりしやすい、水分抜けもしにくい
ということがあります。
バターの代用としてマーガリン
あとは、少し風味を抑えたところでマーガリンを使うこともあります。
バターよりは軽い感じで仕上がります。
完全な植物性ではないので、少しリッチ感を残したいときには使うことがあります。
バターより柔らかく扱いやすいので、初心者の方にはマーガリンが使いやすい、ということもあります。
マーガリンもトランス脂肪酸が気になるところですが、
これも極力抑えたものが販売されていますので、選んで使うといいでしょう。
サクッとした食感、あっさりならショートニング
油の香りを抑えたすっきりしたパンを作りたいとき
こういう場合はショートニングを使うことが多いです。
ショートニングは植物性の油です。
色も白く、香りもないのでとても便利です。
素材の味や香りを楽しみたい場合には素材が引き立つということがありますね。
サクサク感が出るのもショートニングの特徴ですのでショートブレッド、ソフトクッキー系も
使うことがあります。
トランス脂肪酸の問題が近年話題になっていますが、
トランス脂肪酸フリーのものも出ていますので、気になる方はそちらを使うのもいいと思います。
教室ではオーガニックのトランスファットフリーのショートニングを使っています。
今はネットでも買えますが、お店にもおいてあるところが増えて
割と手に入りやすくなっていますよ。
軽さと日持ちを重視するなら「オイル」
オイルの基本特性としては「軽さ」「しっとり感」「保存性」です。
ぱん蔵のレシピでは植物性の油脂で菜種油が活躍します。
ベジタリアンメニューでぱん蔵の「シュトーレン」はバターの代わりに使っています。
あっさりとした感じで仕上がります。
ちょっとバターとは扱いは違ってくるんですが、パイ生地やスコーンなんかも出来ちゃいますヨ。
ショートニングと菜種油を掛け合わせて作るパンも美味しいです。
↑ 植物性の素材だけで作った天然酵母のガレット
菜種油の代わりとしては米油、紅花油など香りのないものがお勧めです。
あとよく使うのは、オリーブオイルです。
オリーブオイルは香りがあるのでイタリアン的なパンにしたい時に使います。
焼くとソフトな香りなので、他の油脂の代用にしたい場合もオリーブオイルは人気です。
フォカッチャやバゲットなど、軽やかな食感と日持ちを求めるならオイルが適しています。
液体油脂は生地への浸透が早く、
しっとり感が長続きします。
軽い口当たりやしっとり感をもたらし、日持ちを良くします。
「パン バターなし」でも風味を出す方法
いくつかの油脂の特性をご紹介してきましたが、
乳製品を使いたくないけどそれに近い味わいや香りを出したい、という方へ。
風味付けを工夫することができます。
ポイントは
- 香りの強いオイルを使う(例:エキストラバージンオリーブオイル、太白ごま油)
→ ちょっと個性的に仕上がります。
- 焼き上がり直後にオイルを塗ることで香りをプラス
→ しっとりさ長持ち 乾燥を防ぎます。
- ハーブやスパイスを加えて風味を補う
→ 香りが欲しい時はスパイスを加えることもアリです。
健康・食生活から見た油脂の選び方
油脂によって違う 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
・バター、ショートニング(パーム油)、ココナッツオイル
飽和脂肪酸が多く、風味は豊かですが摂りすぎ注意。
*ココナッツオイルは中鎖脂肪酸が多く含まれており、他とは違う特徴でもあります。
・植物性オイル(オリーブ油、菜種油、コーン油など)
不飽和脂肪酸が豊富で、心血管系への負担が少ない種類も。
⚠️こちらでは単純に「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」を比べましたが
それぞれのオイルに特徴があるので一概に「いい」「悪い」と言えません。
アレルギーや動物性脂肪を避けたい人への選択肢
ヴィーガンや乳製品アレルギーの方は、植物性オイルを選ぶことで安心してパン作りが楽しめます。
バターの代わりに
・ショートニング
・菜種油
・米油
:太白ごま油
・ココナッツオイル
これらはクセがないのでどんなパンにも合います。
オーガニック・無添加油脂の選び方
素材の風味や安全性を求めるなら、
無添加や圧搾のオイル、バターなどがおすすめです。
圧搾一番搾りの油は圧力で油を絞るので
素材の香りや色合いもきれいに残り、ビタミンなどの栄養素も残りやすいです。
素材はなるべく「国産」を選ぶことをお勧めします。
現在では外国産原材料を使うことが多くなっていますが、
遺伝種組み換えのものがほとんどだという現状があります。
日本では、遺伝子組み換え作物の商業栽培は行われておらず、
農産物は遺伝子組み換えの可能性がないので(今のところ)安心して使えます。
失敗しないバター、オイルの保存方法
バターの保存と劣化を防ぐコツ
- 冷蔵庫で保存し、開封後は早めに使う
- 長期保存は冷凍がおすすめ
オイルの酸化を防ぐ方法
- 遮光瓶に入ったものを選ぶ
- 高温多湿を避けて保存
- 開封後はできるだけ早く使い切る
どんなパンにしたいかで油脂の種類を考える
それぞれの油脂の種類によってどんなパンになるのか、と言うことをお話をしました。
ご自分でレシピを変換したいとき、レシピを作る際には
どんな仕上がりにしたいか
どんなパンが食べたいか
ということを考えて使うといいと思います。
パンを作る際には目的がいろいろあると思います。
・プレゼントにしたいので、その届ける方の好みに合わせる
・アレルギーがあるのでその素材を避けてたい
・お菓子感を出したい
・あっさり作りたいけど日持ちするものにしたい
などなど、その目的に合った材料を選んでいくのがいいですね。
バターをショートニングに変換したい、とかその逆もあると思います。
そんな時はこちらの記事をご参考にどうぞ。
ショートニング 代用 – ショートニングはバターに代用できる?ショートニングとバターの使い分けについて
ご自分でレシピを作ってみるときにはいろいろ試すのも楽しいかと思います。
ぜひいろいろ試して自分好みのパンを作ってみてくださいね!
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